2015年視覚障害リハビリテーション研究発表大会参加報告


 
6月に行われた視覚障害リハビリテーション研究発表大会に今年もJBCAが参加しました。
有志2名が会場にてポスター発表を行いました。
その報告として、発表に使用した抄録と参加者に書いていただいた感想を掲載しました。

 

演題:

視覚障害者の積極的社会参加の1例〜JBCA認定コーチによる社会貢献への挑戦〜

演者:
○長峰美枝 日本視覚障害者コーチ協会
 深谷志帆 日本視覚障害者コーチ協会
 小野眞史 日本医科大学 眼科
 斉藤恵子 日本視覚障害者コーチ協会

本文:
【はじめに】
障害者のより豊かな社会生活実現のために、障害受容の先の目標として自身の積極的な社会参加が有る。
その目標達成のために職能に対する各種支援やさまざまな取り組みが行われている。
視覚障害者は聴覚、言語に対して晴眼者と同等あるいは時に優位な感覚を持つ可能性も報告があり、我々は新たな職域としての職業コーチの育成に取り組んでいる。
今回は、視覚傷害者自身が職業コーチとして自らが社会の担い手になり、社会に関わっている1例につき報告する。
【症例】
小児期より全盲女性。大学時より社会福祉を専攻し、社会との関わりを模索してきた。
「人がやっていないことをやりたい」という思いから、まだ職域として確立していない視覚障害者としての職業コーチとなることを決意した。
【経過】
37歳時、JBCA(日本視覚障害者コーチ教会)のAPT(アリスプロジェクト・トレーニング)参加。
同時に職業コーチとしての活動を開始する。「晴眼者と肩を並べてやっていきたい」という思いから、当初は視覚障害を有することを公言せずに営業活動を行っていた。
そのため自分自身は日常生活での障害受容ができていると思っていたが、新たな領域に挑戦したことにより、さらに新たな障害受容が必要であることに気づき、
「視覚障害があるからこその強みを活かし、これまでの人生で得たすべてを使ってクライアントを支援する」ことを決め、
現在、パーソナルコーチ、ワークショップ開催、講演活動を積極的に行っている。
【考察】
視覚障害があるからこその貴重な経験やその人らしさを活かし、受け身となることなく積極的に新たな領域に挑戦することが可能であった。
その結果として、晴眼者と肩を並べ、時にそれ以上の社会貢献の実現ができるものと考えられた。
 今後も、JBCAはコーチングを通じて障害者の障害受容、職域への挑戦、そして社会貢献の実現という目標達成を支援する。

 
 
 

【抄録に込めた思い】

○長峰美枝 日本視覚障害者コーチ協会
 深谷志帆 日本視覚障害者コーチ協会


抄録作りのテーマは、「社会に受け入れてもらう時代から自らが社会に貢献する時代へ」を軸にしていた。
私たち視覚障害者は、一方的に社会からの支援を受け取るだけではなく、自らを活かして社会に貢献する立ち位置にいることを伝えていきたかった。
視覚障害当事者とその支援者の方々に、その可能性を見出してもらいたいと思っていた。
コーチングを活かし社会と関わっている当事者を症例報告としてまとめた。
抄録はより具体的になり、ポスターは視覚的にインパクトを出し完結明瞭にまとめることができた。

【リハ大会当日の様子】
ポスターの前で足をとめてくださったのは、視覚障害当事者よりもリハビリの現場にかかわる援助者の方が多かった。
視覚障害者のリハビリテーションを支援する者同市として会話をする機会が多かった。
これまではコーチングやJBCAの紹介をすることが中心だったので、私たちの立ち位置が変化したためと思われた。

【今、視覚障害リハビリテーションで注目されていること】
以前の視覚障害リハビリテーションは、援助者のほうがゴールやリハビリテーションの訓練の計画を考え、それを当事者に提示して提供する流れが基本だった。
現在では、主体が視覚障害当事者に変わってきつつある。
その結果、視覚障害当事者の自己確定が大事にされてきている。
リハビリテーションのゴールも当事者のニーズも、自分で考え自分に合ったスタイルを自分で決めていくことが大事にされつつあるのが、大きな変化の一つ。
もう一つは、リハビリテーションといえば昔は職業復帰や職業的自立・経済的自立が中心とされてきたが、中心のとらえ方が生活自立へと大きく変化してきている。
職業につくつかないということではなく、その人がその人らしく社会に参加していくことが注目されはじめてきている。
大会の中でも「その人が持っているものを活かしていくのが大事」という発言を何度も聞いた。
20年前だと社会が求めるものに障害者が合せていく世の中だった。
特に視覚障害者の場合は、「これとあれができるから雇ってください」とか、「仕事をするためにこれだけは身に着けなければだめですよ」と言われていたが、
その人の特徴や個性に併せてその人にできることは何だろう、その人がイキイキ生きるためには何が必要だろうということを皆が本気で考え始めている空気を肌で感じた。

【リハビリテーションにおけるコーチングの可能性】
だからこそ、コーチングが活きてくると感じた。
その人らしく生きていくとはどういう事なんだろう?
まず本人が自分らしく生きるということをきちんと自覚できるよう、コーチングを使ってそれをサポートできるのではないか。更にそれを形にしていくのも必要。
コーチとの対話やコーチング的関わりによってどんなふうにしていくとそうなるんだろうという行動計画やプランのニーズを現実化していく流れを作るのに、コーチング的関わりが活きてくると思う。
コーチという役割を持った人が、援助者と当事者に関わるという関わり方もある。
援助者自身がコーチングスキルを身に着けてリハビリテーションの力をプラスすることで、リハビリのプロセスや目標がパワフルになるかもしれない。
また、当事者自身がコーチングを学んだりコーチング的な生き方を身につけることで、当事者が自分を大事にしながら主体的に生きる生き方を手に入れることにもつながると思われる。
どこにどんなふうに関わっても、コーチングがこれからの視覚傷害リハビリテーションを活気づけ、より深まりや広がりとなり、多様性の世界に活かしていけるのではないか。

【今後の展望】
リハビリテーション現場の援助者をサポート。
コーチングを使ったコミュニケーション講座で、関わり方の大事な部分を伝え、現場に活かしていただけるのではないか。
これから自分がどんなふうに生きていこうか模索する当事者をサポート。当事者だけでなく家族にも。
個人とその背景にあるものすべてをとらえることができる私たちなので、家族のニーズや個人のニーズ・社会のニーズ全体を見ながら、その人をサポートしていくことができる。
しっかり心に寄り添う関わり方で、積極的に社会に貢献していきたい。


 
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